成年後見制度の現状と抱える課題
成年後見制度の現状について見えていること
①いまだ知名度が低く、利用者が少ないことがあげられるでしょう(最近はややマシになってきたとは思いますが)。厚生労働省によると全国の認知症のお年寄りは280万人くらいとのこと。そこから考えると現在の利用者がいかに少ないか(2011年1月から12月までの申立て件数は31402件)わかります。
埼玉で起きた悪質リフォーム事件をきっかけに、少し浸透しつつあるこの制度ですが、まだまだ世間一般に浸透しているとはいえない状況といえます。また、知っていてもその手続きの複雑さや裁判所の関係する手続きであることから敬遠する人も多いようです。
②費用がかかりすぎることがより利用しにくい状況にしています。現状では資力のある人(要するにお金のある人)向けの制度である感は否めません。本来こういった制度を使って支援すべきなのは資力のそれほどない人であるはずなのに、そういった人を助けるようにできているとはいえないのです。
もちろんそういった人たちを助けるための地方自治体の成年後見制度利用支援事業(自治体が申立て費用や後見人の報酬を補助してくれる制度)がありますが、かなりの自治体が生活保護を受けていることや、市民税非課税世帯であることを支援を受けるための用件としており、対象者がかなり限定されている状況です。
③後見人の内訳は、成年後見制度が始まってからそれなりの年月が経過したにも関わらず、やはり家族後見がかなりの割合を占めています。司法書士・弁護士・社会福祉士などの職業後見人がつく場合は以前よりは増えてきたものの、依然として家族が後見人になることが多い。そもそも後見人の候補者が少ない。後見人の育成・指導によって多様な選択肢を提示できるようにする必要があると同時に、経済的負担の軽減が必要と思われます。
成年後見制度のこれからについて
介護保険との車の両輪としてつくられたはずのこの制度ですが、介護保険と比べるとあまり制度のPRに力を入れているとは思えませんでした。個人的には悪質業者からお年寄りなどを守ることはもちろん、身上監護など、これからの世の中にとってとても有用な制度だと思うので、微力ながら少しでも普及が進むように力になれれば・・・と思っています
埼玉の事件以降、市町村長が申立てを行うための要件が緩和されるなど、良い方向に向かっているといえる状況もあります。利用支援事業の要件が厳しくまだまだ支援を本当に必要としている人が支援を受けられない状況にありますが、行政・民間を問わず、これからの取り組みに期待したいと思います。
われわれ行政書士も制度の普及のためによりいっそう努力していきます
当事務所でも「制度、手続きがわかりにくい」と考える方の相談に対して、なるべくわかりやすく説明して制度・手続き面の抵抗感を払拭できるように努めたり、資力があまりない人が利用するための方法を一緒に考えたり、個別具体的なケースについて最良の選択ができるように利用を考えている皆さんのお手伝いをしていきたいと考えています。
成年後見人制度はまだまだ発展途上。より良くなるように、様々な声の反映を。