クーリングオフと中途解約
現在日本では、悪徳商法に対してかなり法律の整備が進んでいますが(特定商取引法・消費者契約法など)、それでも悪徳商法の被害者は後を絶ちません。
悪徳業者は法律を熟知しており、被害者側が法をよく知らないことを巧みについてくる上に、脅しなどを併用してくることなどが主だった理由だと思われます。
そこで
- 必要最低限の知識を身につけて業者を撃退、あるいは付込まれないようにする
- 契約書を穴があくまで見て、不安があったら契約しない
- 契約をさせられた場合は考えこまず、手早く調べるようにする
- 業者や問題解決に不安を感じたら、すぐに消費者センターなどに相談してみる
ことが重要になります。
このページでは、悪徳業者によって契約をさせられたときに強い味方になってくれるクーリングオフ制度と中途解約権を中心に、悪徳業者から消費者を守るための法制度、そして悪徳商法について説明していきます。
悪徳業者は法律を熟知しているプロであることをしっかり認識しておく必要あり。
クーリングオフとは何か
クーリングオフ制度とは、法律で決められた範囲内にある商品・権利・役務の提供について、一定期間、無条件かつ一方的に申し込みの撤回あるいは契約を解除できる制度です。くり返しますが、無条件かつ一方的に、です。
通常、何であれ契約というものはそんなに簡単に一方的に解除したりできるものではありません。相手に落ち度がないのに一方的に解約する場合は、たいてい違約金や損害賠償を支払わないといけなくなります。クーリングオフはきわめて例外的な制度といえます。
ではなぜこのような制度が作られたかというと、例えばセールスマンが家に上がりこんで帰ってほしいのにいつまでも帰らなかったり、断っても断ってもしつこく電話してこられたり・・・といったような状況では消費者はなかなかいつも通りの判断ができませんし、契約をする意思も固まっていないのに業者に押し切られて契約させられてしまうことがしばしばあります。
また、販売員と消費者では商品などについて持っている知識に差があり、販売員が常に優位に立って自分の情報ばかりを提供する、といった状況になりがちです。
そこでこのような、業者と消費者が平等な状況での契約であるといえない契約において、消費者が書面などから情報を得て、一度契約を冷静に考え直す機会を与えることが望ましいと思われる場合に、考え直す機会を与えて消費者を保護するのがクーリングオフ制度なのです。
クーリングオフ制度を利用した場合、上記の通り通常の解約なら必要となる違約金や損害賠償を消費者に請求することはできませんし、業者にすでにお金を払っている場合は一部例外を除き(後述)、全額返還してもらえます。
クーリングオフ制度とは、このように消費者にとってとても心強い制度です。しかしクーリングオフ制度も万能ではありません。
はじめに書いたように法律で決められた範囲内にある商品・権利・役務の提供についてのみ行使可能であり、行使できる期間も決まっています。
消費者を保護する必要性が高い場合に行使できる、という前提になっているため、購入者が商品購入時に自分できちんと商品について判断して購入できる(と考えられている)、通常の店舗での購入や通信販売については行使できません。
また、政令指定の消耗品(健康食品・化粧品などが代表例)について使用・消費した場合は、その商品の性質などによってクーリングオフできなくなること、使用・消費分の金額が返還されないことがあります。
3000円未満の商品を現金払いで購入した場合、クーリングオフできません。また、消費者を保護する制度なので、事業者同士の取引には適用されません。
あくまでも個人保護のための制度であり、事業者同士の取引には適用されないのは要注意。
クーリングオフができるのはどんな時か
クーリングオフを行使するには、契約の対象が法律によって指定されているものであり、契約から法定の期間が経過していないことが必要です。
期間の計算の仕方ですが、契約時ではなくクーリングオフについて記載されている書面を交付された日(その日もカウントします)から計算します。
クーリングオフの期間・対象商品などをまとめると次のようになります。
取引形態 | 期間 | 対象商品・権利・役務 |
---|---|---|
訪問販売 | 契約書面の交付日から8日 | 特定商取引法の規定により指定された指定商品・権利・役務店舗での取引、現金での3000円以下の取引を除く |
電話勧誘販売 | 契約書面の交付日から8日 | 特定商取引法の規定により指定された指定商品・権利・役務 |
連鎖販売取引 | 契約書面の交付日と商品を受け取った日のどちらか遅いほうの日から20日 | いわゆるマルチ商法のことすべての商品・権利・役務が対象 |
特定継続的役務提供 | 契約書面の交付日から8日 | エステ、語学教室、学習塾、家庭教師、パソコン教室、結婚相手紹介サービス |
業務提供誘引販売 | 契約書面の交付日から20日 | 内職・モニター商法のことすべての商品・権利・役務が対象 |
割賦販売 | クーリングオフ制度の告知日から8日 | 割賦販売法指定の商品 |
海外商品先物取引 | 基本契約締結の翌日から14日 | 店舗外での指定市場における指定商品の取引 |
宅地建物取引 | クーリングオフ制度の告知日から8日 | 宅地建物取引業者が売主である宅地建物の取引で、店舗外で行われるもの |
現物まがい商法 | 契約書面の交付日から14日 | 特定商品預託取引法指定商品・施設利用権の店舗外での預託取引 |
ゴルフ会員権契約 | 契約書面の交付日から8日 | 50万円以上の会員権の新規募集 |
投資顧問契約 | 契約書面の交付日から10日 | 投資顧問業者との契約但し清算義務あり |
生命・損害保険契約 | 契約書面の交付日か申込みをした日のどちらか遅いほうの日から8日 | 1年を超える生命・損害保険 |
根拠法規
特定商取引法・割賦販売法・海外先物規制法・宅地建物取引業法
特定商品預託取引法・投資顧問業法・ゴルフ会員権契約適正化法・保険業法
注意してほしいのはクーリングオフの期間の計算は、あくまでクーリングオフについて記載した契約書面を交付した日(取引形態によって若干の違いはありますが、基本的な考え方は同じ)から始めるのであって、契約時ではありません。
業者の中にはクーリングオフの期間や、期間の起算時について嘘をいう業者もいますが、騙されないようにしてください。